「家族みんなでお店を開こう」
夫がこう言い始めた時、
正直なところ私は「とんでもない!」と思っていました。
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家族で商売。
言葉としては素敵です。
でも私は商売の大変さを知っています。
ましてや、家族経営の大変さもよく知っています。
商売には夢もありますが、
同じくらい苦労もあります。
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けれど夫は本気でした。
家族がそれぞれ別々の人生を歩くのではなく、
同じ方向を向いて生きていく。
でも、それは私たち夫婦の理想でもありました。

そのころには、
双子の息子たちも少しずつコケットの仕事に関わるようになっていました。
発送を手伝ったり。
商品の管理をしたり。
もちろん最初からうまくいったわけではありません。
親子だからこそ遠慮がない。
仕事の話をしているのに、
気づけば親子喧嘩になっていることもありました。

逆に、
家族だからこそ乗り越えられることもありました。
忙しい日には自然と誰かが手伝う。
困っていたら誰かが助ける。
気づけばコケットは、
私一人のお店ではなくなっていました。
家族みんなで支えるお店になっていたのです。
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そんなある日。
剣道での知り合いの方から、
こんな話を聞きました。
「今まで行商に来ていた武道具店さんが来なくなったんだ。
困ったなあ。」
私はその言葉が妙に心に残りました。

剣道をしない私でも知っています。
竹刀や防具は、
単なる道具ではありません。
剣士にとっては、
共に戦う相棒です。
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そして朝来市がある但馬地方には、
以前から武道具店がありませんでした。
竹刀を一本買うにも、
車で一時間以上かけて遠くの町まで行く。
あるいはネットで注文する。
それが当たり前になっていました。
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その話を聞いた時、
私は自然に思いました。
「それなら私たちがお手伝いできるかもしれない」

地域の剣士たちが困っている。
その困りごとを解決できるかもしれない。
そして私は、
剣道を愛する夫を尊敬していました。
家族全員が剣道を愛していました。
地域の剣道文化を支えることは、
私たちだからこそできることかもしれない。
そう思ったのです。
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今振り返ると、
その日が新しい物語の始まりでした。
(第七話へ続く)