秋祭りが終わると、朝来(あさご)は急に肩をすぼめたように静かになる。
朝の霧が家々を包みこみ、台所の窓を曇らせる。
気がつけば、朝晩の冷えこみが指先にしみる季節になった。
冬支度のはじまりは、火鉢の炭おこしから。
ぱちり、と小さくはぜる音に、どこか遠い日の記憶がつられて起きてくる。
鉄瓶を五徳にのせると、部屋の中いっぱいに、炭の匂いがゆっくりと広がる。
「更年期の貧血には鉄分がいい」とインスタグラムで誰かが言っていた。
鉄瓶で沸かした湯には、鉄分がよく出るという。
更年期という言葉が、ふと他人事ではなくなってきた年頃でもある。
IHでも使えるが、せっかくなら炭の火に頼りたい。
古い道具が、当たり前のように今の暮らしになじむのが、どこかいじらしい。
子どもたちを起こし、朝の戦場をなんとか切り抜けるころ、
火鉢の鉄瓶が、しゅんしゅんと湯気を立てはじめる。
役目を果たしたと言わんばかりの、その控えめな音が好きだ。
家の気配がすっと引いて、ひとりになる。
ようやく湯のみに白湯を注ぐと、ほっと胸の底がゆるむ。
たったそれだけのことなのに、今日がきちんとはじまる。
【商品詳細】
素材 鋳鉄
重量 約1500g
用量 1.5L
製造 長文堂(山形県)
山形・長文堂の鉄瓶は、薄くて軽いことでも有名です。
一般的な鉄瓶の重さは約3~4kg
長文堂の「鉄瓶なつめ」は、約1500gと軽いのが特徴です。
長文堂の高度な技術と素材(鋳鉄)の良さが、薄づくりを実現しています。
【ご使用とお手入れ】
ガス火・IHヒーターで使用可能です。
熱源は選びませんが、中火程度のご使用をおすすめします。
水を入れたままでの放置は厳禁です。
使用後は、鉄瓶が温かいうちに蓋を開け、予熱で乾かしてください。
内部は錆びてきますが、問題ございません。
触らずそのままお使いください。
鉄分補給や美味しい白湯を楽しめるよう、内部も漆焼付で着色しています。
山形鋳物のこと
山形鋳物は遠く康平年間(西暦1060年頃)源頼義が奥州平定の命を受け山形地方に転戦の折、従軍した鋳物師によって山形市内を流れる馬見ヶ崎河原の砂が鋳物造りに適していることを発見されたのが始まりと伝えられています。
以来、伝統を受け継ぎ900年間、薄肉鋳物技術から造り出される製品の美しさは定評があります。昭和49年、伝統工芸品産業振興法の成立とともに伝統工芸品に指定されています。