「磁今 JICON」今村製陶さん 第二話【Coquette Talk On】

陶磁器の原料は石だ。
山から陶石を採掘し、それを粉にして水に混ぜる。
すると沈殿した部分と、粉が溶け込んだ上澄み液とに分かれる。
その上澄み液をろ過して、残った粉を粘土にする。

もともとの有田焼の原料は、有田市にある泉山という山で採掘される白い石だ。
1616年、この泉山を 朝鮮人陶工・李参平が発見し、日本で初めて陶磁器が誕生したといわれいる。

(記事中の表記、今村肇氏=今村、コケットのマスター高橋通泰=髙橋、筆者コケット高橋香=香、敬称略)

今村:でも僕の仮説はちょっと違ってて。
白い石は先に見つかってたんじゃないかと思うんです。
それで秀吉が朝鮮から技術者を連れてきたと思っています。

泉山は国指定史跡・泉山磁石場として保存されている。
この有田で、日本で初めて陶磁器が誕生して以来400年以上経つ。
”山”とはいうが、400年間掘り続けられた山は、もはや山の姿を留めていない。
現在、陶石の採掘は、ほとんど行われていない。
今の有田焼の原料となる陶石は、熊本県の天草陶石を使用している。
熊本の天草陶石は、有田泉山のものより白いという特徴がある。

今村:磁今ももちろん天草の陶石を使っています。
天草の山から採掘された石は、おもに4つの等級にわけられています。
作家さんは「特上(とくじょう)」、多くの有田焼の窯元は「撰上(えりじょう)」、大量生産品は「撰中(えりちゅう)」「撰下(えりげ)」を使います。
しかし、磁今は全くオリジナルの石を使っています。
昔から有田は高温の1300度で焼くことで「丈夫な割れない有田焼」を武器に器を作ってきました。
それが有田の職人のこだわりと自信です。
しかし僕は、石から変えて温度や釉薬もオリジナルのやり方をすることで「磁今」を生み出しました。

天草の山から採掘された石を、いわゆる良い石(耐火度の高い白い石)と良くない石(耐火度の低い茶色の石)の何種類かの等級にわけ分類された磁土をつくる。
良い石は昔から簡単に取れる所から採っていたため、現在の採掘場は良い石をとるために良くない石が大量にとれる。
しかし、たくさんと採れる良くない石によって採掘コストが上がる一方、良い石の価格はほぼ変わらないままで、事業の継続が危うくなっているのが現状だ。

良くない石と表現しているが、使い方によっては、これがとても良い石になるのだ。
今村氏は、ここに着目し、この「良くない石と呼ばれている良い石」が有田・波佐見地区でも多く使われるようになれば、無駄に陶石の山を掘る必要もなくなり、陶石を採掘する人たちも助かるのでは?と考えた。

そこで、低火度(1200度前後)で磁器化する磁土=「良くない石」を使い、それにあった釉薬を独自で開発し、あの磁今が生まれた。
素材感のある優しい風合いを持った「生成りの白」の誕生だ。

今村:有田焼はもともと1300℃で焼くんですが、僕はこれを1240℃で磁器化する磁土をあえて使うことで、独特の風合いを作っています。

:1240℃で焼くっていうのは、難しい技術なんですか?

今村:いや、焼くことそのものはそんなに難しいことではないです。
ただ、この有田では1300℃で焼くっていうことを当たり前としてきたので、それを変えるということがもしかしたら難しいことかもしれないですね。
1240℃で焼くためには絵具も釉薬もすべて変えなくちゃいけない。
僕はたまたま、磁今というブランドをゼロから立ち上げたので、それが可能だったんです。
有田焼の陶石の採掘現場では、わずかな良い石を掘るために多くの他の石を捨てている、というか放置している。
採掘コストがかさんで、このままでは廃業もあり得るという現状を前にして、やっぱり、この石を使うことには意味があるなと思ったんです。

:そのことでより持続可能なものになりますよね。
放置されているものに新たな使命が生まれるというか。

今村:でもだからといって、原料代が安いってわけじゃないんですよ。

高橋:えっ?!そうなんですか?

今村:誰も使わないもの、流通していないものなので、むしろコストがかかるんです。
原料代は「撰上」と同じなんです。

磁今の磁器は、いくつかの作り方で作られる。
デザインによって、それぞれの形状にあった作り方で作られている。

圧力鋳込み(あつりょくいこみ)
上下雄雌がある型に粘土を流し込み成形するやり方。
型に空いた小さな穴から粘土が入っていく。
いくつも重ねられた石膏型の中に、空気圧で粘土を注入する。
空気圧で押し出すから圧力鋳込み。
圧をかけるので土がすごく締まる。

今村:磁器は、このように石膏型を使った作り方が合っているんですね。
陶器はロクロで成形するのだが、陶器の土をこの石膏型のやり方で作ると粒子が荒く、鉄の分量が乱れる。
陶器の荒い土を石膏型に入れて作ることはできない。
陶器はむしろ手作りで作った方が素材感が引き立つ。
しかし、磁器はもともと素材感がないのが素材なので。

排泥鋳込み(はいでいいこみ)
石膏型にドロドロの水のような粘土を流し込む。

時間が経つと石膏が水分を吸って、約3ミリくらいの厚み部分が固まる。
中のドロドロ粘土を排出し、よく乾燥させると形になる。
この時点では、形になっているとはいえ大変やわらかい。

これを800℃で焼く。
すると写真のピンク色のようになる。

これに釉薬をかけて1200℃で焼くと写真の白いものになる。
はじめの石膏型に比べ、出来上がり品は15%ほど小さくなる。

:なるほどこんなふうにシステマティックに作られているとは思いませんでした。
しかも、何度も焼くんですね。

今村:作り方からみると磁器は本来大量生産に向いているんですね。
個性がないといえば個性がないんだけど、でも僕はそれはたんに磁器の特性だと思っていて、それを無理して手作りで作る必要はないと思うんです。
手作りは手作りの良さがある。
でも、お客さんに安くて良いものを買ってもらいたい。
そこをあえて手作りにして高いものにして買っていただくよりは、安く大量につくれるという磁器の特性を活かして、より広く楽しんでいただくほうがいいと思っています。
けして手作りの作家物も悪くはないんだけど、磁今としてはこの磁器の素材の特性を活かして作りたいんです。

今村:これは機械轆轤(ろくろ)っていう作り方です。
波佐見焼きは、轆轤(ろくろ)でもオートメーション化してもっと大量生産型にしているところもありますが、いわゆる窯業(ようぎょう)、器を作っているところは轆轤(ろくろ)で手作りしているところが多いですね。

左と右で微妙に形が変わっているのが分かるだろうか。
左が轆轤(ろくろ)を回してできたもの。
右が削りを施したもの。
アウトラインをよく見比べて頂きたい。
わずかに削って、シルエットに微妙な反りを加えているのだ。

今村:一歩間違えればふにゃふにゃしたものになってしまうんです。
キリッとさせたまま柔らかさを出す。
たぶん、うちにしか出来ないことだと思います。

磁今を磁今たらしてめているのは、この削りと釉薬だ。
型から出したものに丁寧な削り作業を施すことで、手作りのぬくもりと微妙な個体差が生まれる。
半ばオートメーションで作られているようで、しかし、しっかりと人の手を入れ、命を吹き込むのだ。

この方法は、たしかに効率的ではないかもしれない。
効率的に生産できる磁器ゆえにもっと企業的な窯元になることは可能なのだが、今村氏はそれを選ばないだろう。

磁今は、とてもデザイン性が高い。
それゆえ時に作家っぽく扱われることも多いらしい。
しかし、そんなとき、この半オートメーションの作り方から「作家じゃないじゃん、なに作家ヅラしてんの」的な評価を受けることもあるという。
これは今村氏にしてみれば、とんだとばっちりだ。
彼は純粋に、実直なものづくり人なのだ。
素材をよく知り、素材を活かしたものづくりをすることは、作り手として絶対不可欠な要素だ。
今村氏はいう。
「僕は社長業は得意じゃないんで、できればずっと作っていたいです。」

ものは人が作る。
まさに作り手の魂の結晶なのだ。

(第三話へつづく)

インタビュー第一話【Coquette Talk On Vol.3】「磁今 JICON」今村製陶さん


ごはんとおやつと暮らしの道具店コケット

大分県中津市京町1484-6
Tel. 0979-22-8234
(金曜定休+不定休)
営業時間 11:00~17:00
#カフェのこと・暮らしの道具のこと

※ 中津城から徒歩1分
周辺に市営駐車場(無料)が多数あります。
カーナビで表示されない場合は、中津城を目安にお越しください。
迷った場合は、遠慮なくお電話を。

「磁今 JICON」今村製陶さん 第一話【Coquette Talk On Vol.3】

コケットのお客様にはお馴染みの食器ブランド「磁今/JICON」を展開する今村製陶さんは、古くからの町屋が立ち並ぶ有田の目抜き通りにある。
有田陶器市が催されるときには、たくさんの出店が並び最も賑やかな場所になるメインストリートですが、催し以外の日常は、なんとも静かな田舎町だ。

こちらが、代表の今村肇氏。
やんちゃ坊主のような笑顔が印象的。

そして上品で美しい奥様の支えがあって、今村氏の情熱が素敵な作品となって羽ばたいているんだなあ。

(記事中の表記、今村肇氏=今村、コケットのマスター高橋通泰=髙橋、筆者コケット高橋香=香、敬称略)

高橋:磁今は、作品にドラマを感じるんです。
佇まいのその向こうにストーリーが見えるっていうか。
和にも洋にもテイストが合う、そして現代にもアンティークにも合う。
何も盛り付けられていなくても、ドラマがある器なんですよねえ。
それはやっぱり生成りの白が所以なのかなあ。

香:「ストーリー性がある」っていうのは、コケットのモノ選びの基準にしていて、それだけで完結しない。
他のものと掛け合わせたときにいい役者になる。
モノの向こうにある物語を大切にしているんです。

今村:まあ、うちのはそんなに主張が強くないんで、馴染みやすいっていうか。

高橋:逆にそれがいいんですよ。
出すぎず引きすぎず。そしてすごく温かみがありますよね。

今村:前からあったかのような?(笑)
これ出来た時もみんなで言ったんですよ。あれ、前からあったかなって(笑)

香:ああ、そうですね。分かります、その感じ。
そのままでアンティークのようでもあるし、アンティークと一緒に使っても違和感がない。

今村:ひと昔前だと、伝統を否定して新しいものをっていう考え方があったんだけど、僕らは伝統を引き継いで肯定して、今必要とされている部分はどこなんだっていう考えの上でモノづくりをして来たし、これからもしようねっていうふうには考えています。

なるほど、モノづくりに対するとても真摯な姿勢が見て取れた。
そうか、今村氏が語った“自己主張しない”という磁今の個性は、そのまま今村さんのものづくりの姿勢でもあるのだ。
伝統工芸の世界にいると、伝統という長い流れの中に立って、自分という個のあり方とのジレンマに苦しむこともあるだろう。
しかし、彼はその流れに掉さすことはせず、流れの一部として個性をうまく表現している気がする。
伝統を引き継ぐ者のその真摯な生きる姿勢に共感を覚えつつ、私たちは工房へと向かった。

その時、奥様が「全工程をしている有田焼の窯元ってなかなかないので、どうぞご覧ください。」とおっしゃった。
全工程?そのファクトリーな響きに、そもそも有田焼つまり磁器ってどうやって作られるのだ?という疑問が、いまさらながらに沸いた。
焼き物って、土をこねてロクロで成形して窯で焼く。
高校の美術の授業で作ったことがあったから、何となくだがそんなものだろうと思っていた。
しかし、このあと磁器と陶器ではこんな違いがあるのかと驚くことになる。

今村:有田焼っていうのは、基本的には分業制なんです。
原型は自分で作って、石膏型を作って、そこから窯元で焼いて、上絵付けはまた別の業者がする。
それぞれの専門職があって外注するんです。

高橋:分業制なんですね。知らなかった。

今村:400年やっているので、分業のほうが生産効率もいいし、そのほうがクオリティも高く保てるんです。
大量生産大量消費の時代は、それが良かったんだけど、今はそんなにめちゃくちゃ売れる時代でもないし。
やっぱり分業制のデメリットもあって、自分は大量生産するつもりはないし、かといって個人の作家さんが一個二個っていう作り方もしたくない。
自分は程よい量を安い値段で、しかも味わいあるものを作りたいと思ったんです。
なのでうちは、外注に出さず全部うちでやっています。

そうか、先ほど奥様がおっしゃった全工程をやっているというのはそういうことか。
工房の一角では職人さんが、湯のみのひとつひとつに釉薬をかける作業を行っていた。
陶磁器は、いくつかの作り方があるが、基本的には原料の粘土を石膏型で形どり、乾燥と幾たびかの窯焼きを重ねて作られる。

高橋:僕は磁今のイメージは、どちらかというと使うというよりは飾っておきたい感じなんですよね。

今村:えっ、使ってください!(笑)

香:あら?私は使いたいけどなあ。
実際コケットのランチでも使ってるしね。(笑)

今村:あ、でも分かります。
食器棚に置いて絵になるっていうのは、みんなで意識して作ってます。
これを見てもらったらわかるんですけど、これがなま生地っていうもので、型から抜いただけの押したらポコって折れるような生地なんですけど、型の切れ目のフチなんかがやっぱり残っているんですね。
それを一個一個キレイにフチを削りなおして、フォルムをはっきりさせる。
大量生産だとこのまま次の工程に行ったちゃうんだけど、うちはここでいったん形を決めなおして、形をはっきりさせるんです。

香:こまかい作業に手間がかかってるんですね~。

今村:手間っていうより、地味(笑)
地味なんだけど、これがけっこう重要でここで磁今の思う形を作るんです。

高橋:受注生産でもないし、大量生産でもない、程よい量って感じですか?

今村:そうですね、自分たちはそれぐらいのほうが気持ちがいいですね。
最初の石膏型を使ってできる形以外は、ほぼ作家ものと変わらないんですよね。

高橋:やっぱりこの菊のデザインっていうのは、大事なラインなんでしょうか?

今村:そうですね、ただ菊のデザインっていうのは一番手間がかかるので、生産率としてはなかなか上がらないんですが。

高橋:有田焼=菊っていう伝統的な形ですよね。

今村:そうですね、昔からある形なので、でもそれをあえてやりたいというか。
あるとき東京のディレクターさんが「あらためて、磁今が菊皿っていうものをいいなと思わせてくれた」とは言ってくれましたね。

高橋:ほかにも有田焼の菊皿ってありますが、僕は磁今は他とは違うものを感じているんですね。
フォルムの丸さに温かみと優しさを感じるんです。

今村:それは、じつは意識していて、他はコンピューターで作るんですね。
デザイナーさんからコンピューターでデザインが上がってきて、作るのもコンピューターで作ってます。
でもうちは、もちろんデザイナーさんからはコンピューターで作ったデザインが来るんですが、そこから先はぜんぶ手でやる。
それによって、あえてちょっとゆるい仕上がりなるんです。

高橋:ああ、それがこの独特のぬくもりを生むんだなあ。

この後、実際に磁器を作る工程を見せて頂いた。
単純に「土をこねて焼く」のではないことを改めて知った。
磁器は、本来機械的に作ることができるものだ。
それゆえに、大量生産品のように海外に多く輸出されていた歴史がある。
磁今も機械を使って作るのだが、それは大量に作るためではなく、原料の特性によるものだ。
原料の粘土を型にはめて形作るのだが、それをあえて手ごねで作るのはナンセンスだ。
原料の特性に合わせた作り方をし、そこに出来る限り人の手を加えて、手作りの良さを加えるのだ。

次回は、工房のさらに奥へ。
磁今らしい温もりが生まれる工程をご覧いただきます。
お楽しみに。

(第二話へつづく)

インタビュー第二話【Coquette Talk On Vol.3】「磁今 JICON」今村製陶さん


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【インタビュー】珈琲木馬 小野悦典さんに聞きました。第一話

珈琲木馬,小野悦典,コケット

高橋:小野さん、お久しぶりです。
僕は、毎日小野さんの珈琲をいれているから、毎日小野さんに会っているみたいなものなんだけど(笑)

小野さん:あはは、そっか。
今日はよろしく~!

珈琲木馬 コケット

高橋:今日はもう特にテーマはなく、小野さんのお仕事ぶりを中心に珈琲談議をしたいなと思っています。
テーマはないって言っておきながら、珈琲談議ってテーマを振っちゃってますけど(笑)
でも小野さんと話すのに珈琲抜きってのは野暮ですもんね。

小野さん:いやあ気づけば40年、珈琲に向き合って来てしまったよね~。
最初に居たところが湯布院の亀の井別荘でしょ?
それがね、いま思えば僕の人生には大きな出来事だった。
なにせ当時の亀の井別荘はすごかったから。

高橋:本当にそうですね、今と昔では湯布院のイメージもずいぶん変わってしまったんですけど。
僕は小野さんよりずっと後に亀の井別荘ににお世話になった世代なんですが、お客様がすごく良かったと思います。
お客様に育てて頂く、その感覚を初めて学んだのが亀の井別荘でしたね。

珈琲木馬 コケット

小野さん:旅館に泊まっているお客様も文化人が多かったでしょ?
だから目も舌もこえているお客様がとにかく多くてね。

高橋:そうですね、僕もよく当時の人気歌手や女優さん方をたくさん接客したのを思い出します。
その上めちゃくちゃ忙しかった。
お昼の湯の岳庵なんて待ち時間が2時間とか当たり前でしたもんね。

小野さん:亀の井別荘の天井桟敷っていう喫茶店が、当時日本でも5本の指に入るといわれている素晴らしいロケーションの喫茶室だったから。
その天井桟敷で提供する珈琲として恥ずかしくない珈琲を焼こうと。
だから、それだけでこの40年を使ってきたんですよ。
もっと商売が上手だったらもっと売れてたと思うんだけどね(笑)

高橋:亀の井別荘の珈琲は衝撃的でした。
深煎りローストのものすごくコクの深い珈琲で、とても印象的な珈琲でした。
それは、いまも続いてますよね。

小野さん:それはね、むかし林玄さんっていう方がコクテル堂っていうのを作ったんですよ。
一時期ね、もうそれはそれは、すごくよく売れまくってたところなんですよ。
昔の日本には深煎りの珈琲がなかったから。
ダークローストっていうのがなくて。

高橋:もともとは亀の井別荘の珈琲はコクテル堂さんのだったんですか?
エイジング珈琲といって熟成生豆を使ってしっかりっとした味わいの珈琲として有名ですよね。

小野さん:そうです。
で、あるとき僕が、亀の井別荘の当時社長だった中谷健太郎さんのところへ行って「珈琲の仕事させてください」っていったら、健太郎さんはもう何も言わんでコクテル堂さんをやめたんですよ。
もうそれはね~、当時コクテル堂っちゅうのは、マニアの間でも一番有名な珈琲屋やったんですよ。
それを止めて俺にやらせるちゅうことは、「お前それを命がけでやれ」っていうことやと。
それはもう、俺の中で何トンかのおもりが背中に乗った瞬間やったね。(笑)

高橋:そういういきさつがあったんですね。

小野さん:当初は、いっさい店も開けんで、納品する豆よりも捨てる豆のほうが圧倒的に多かった。

高橋:ええ~っ、それじゃあ儲けがないじゃないですかあ。

小野さん:でもそれだけ俺の責任っていうのは重かったんですよ。
健太郎さんがそれを俺に変えたんだったら、俺はもう命がけでしなきゃっていう。
それでもうここまでのめりこんじゃった。(笑)
だからいま、巷で起こっていることは僕にしてみれば異様なことですよ。

珈琲木馬 コケット

高橋:そうですね、今、ちょっと珈琲ってファッションになってるところありますよね。
雑貨店やアパレルショップで珈琲豆が売られているのも、近頃当たり前の光景で、こういう場面での珈琲って必ず、コンセプト重視でパッケージがいい。

小野さん:そう、だから俺にしてみれば、100gで千円も二千円もする珈琲なんて考えられないんだよね。
珈琲ってそういうもんじゃないんじゃないかなって、もっと暮らしに密着したものだと思うんだけど。
花の香りがするとかバニラの香りがするとか、フレーバー珈琲なんていうのもあったりしてさ。

高橋:小野さんの珈琲は、たしかに特徴的なんですけど、だからといって過ぎてないっていうかバランスがいい。
例えば映画祭ブレンドなんてめちゃめちゃ濃くて深くて特徴的なんですけど、毎日だって飲めますもんね。不思議に。

小野さん:そう、バランス。
珈琲ってバランスがすごく大事なんよね~。

高橋:小野さんの珈琲には、小野さんの人柄っていうか、魂が入っていると僕は思うんです。

(次回に続く)

【インタビュー連載】第二話 珈琲木馬 小野悦典さんに聞きました。


【 profile 】

小野 悦典
湯布院・塚原高原「珈琲木馬」代表。
丁寧にローストされた自家焙煎珈琲と奥様の焼く素朴な焼き菓子は、多くの食通・珈琲通に定評がある。
珈琲木馬
大分県由布市湯布院町塚原奈良山4-35


ごはんとおやつと暮らしの道具店コケット

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#カフェのこと・暮らしの道具のこと

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夫婦で働くって難しくないですか?

「夫婦で働くって難しくないですか?」なんて聞かれたりすることがある。
コケットは夫婦で営んでいるカフェです。
数人のスタッフも一緒に働いてはいるけれど、経営の軸は私たち二人。
なにせ一日中一緒にいるのだから、最もよく分かり合った仲ではあるが、最もよく分かり合えない仲でもある。

夫婦の問題に単純なハッピーエンドはなかなか無い。
どちらかが妥協するか、お互いに妥協するか、おおむねそんなところだろうと思う。
ストレス処理の仕方って、男女でまったく違うのだとか。
男脳とか女脳とかいうけれど、男は掛け捨て型、女は貯蓄型なのだそう。
たしかに、夫婦喧嘩した翌朝、夫はいつものように「おはよう~」と起きてくる。
私のほうは昨日の口喧嘩が頭から離れず、言い過ぎたことへの反省と、だけどやっぱり納得いかないというモヤモヤした気持ちが、消し炭のように心の中にくすぶっているのだけど、夫はいつもの朝と変わらない。
どうやら夫は「無かったことにしてやっている」らしい。
その、上から目線が返ってまたシャクなんだけど、よくよく考えるとそのおかげで「無かったこと」に収まって、また平穏な日常を暮らせるのだ。

女は忍の一字で辛抱して、その思いを飲み込む。
男は忍の一字で水に流す。

昨日はごめんね。私も言い過ぎたわ。
な~んてことが言えたら、かわいい女ってやつになれるのかもしれないけど、それがなかなか言えない。
話題をわざわざ蒸し返すのもなんだし、とりあえずここは、忍の一字で穏便に(今度こそは言い負かしてやるんだから)と、とりあえず、日常を取り戻すのだ。
水に流してくれてありがとう。
本当はそう思っている。

人生100年、そうまだ半分なのだ。
あとの半分でゆっくりじっくりハッピーエンドを作っていこう。

#ほっと一息つきたいときに飲む癒やしの一杯
コケットの自家製生姜シロップ

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#カフェのこと

#暮らしの道具のこと

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私たちのフィーカ

大分県に移住して感じたカルチャーショックの一つですが、ご近所さんは男女問わずお酒好きが多い。
九州だから?大分県だから?(いい焼酎がありますね)
夫婦で晩酌っていうのもよく聞きます。
いいですよね~、憧れます。
私たち夫婦は、お互いまったくお酒が飲めない下戸どおし。
ケンカしてもお酒のチカラで仲直り~なんていう魔法も効かないので、ちょっとやっかい。(笑)
けれど、最近見つけた小さな魔法。
朝、仕事をはじめる前のほんのひと時、ふたりで温かい珈琲を飲むのです。
仕事前ですから、ゆっくりドリップしている時間もないので、もっぱらインスタントなのですが、このちょっとした珈琲タイムが私たちのリレーションによいバランスをもたらしてくれています。
これこそ、スウェーデンの人々がいう「フィーカ」でしょうか。
いわゆる珈琲ブレイクのように、ちょっと疲れたから珈琲でも飲んで休もうか、ではなく、珈琲を飲むことでより良い関係性やつながりを作りましょうというのが、フィーカなのだそうです。
たんなる場の切り替えや休憩ではなく、関係性を重んじる。
スウェーデンの人々にとって誰かと珈琲を飲むことは、暮らしの中の大切なことの一つなのだそうです。
私たちにとっても、朝、珈琲を飲むことは大切な暮らしの一部になりました。
時には、しっかりドリップしてお店の珈琲の味を確かめたり、そのまま新メニューの話題になったりして、喧々諤々の大議論に発展することもあるのですが、それもまた私たちらしいフィーカなのかなと思ったりもするのです。

#北欧のケトル OPA/Mari

「ごはんとおやつと暮らしの道具店コケット」
大分県中津市京町1484-6
0979-22-8234
(金曜定休+不定休)

カフェのこと https://peraichi.com/landing_pages/view/cafecoquette

暮らしの道具のこと https://kurashi-coquette.jp/

※ 中津城から徒歩1分
周辺に無料市営駐車場が多数あります。
カーナビで表示されない場合は、中津城を目安にお越しください。
迷った場合は、遠慮なくお電話を。

人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットでは喜劇だ。

人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットでは喜劇だ
~チャーリー・チャップリン~

昨日、とうとう夫に言ってしまった。
「あなたのことがストレスです。」
コケット名物の夫婦喧嘩ぼっ発の瞬間!
かと思いきや、もうそれはそれは穏やかに話し合った。
いつもなら売り言葉に買い言葉で、
「なんだと~!〇%☆#&!!」
「あんたこそ〇%☆#&!!」
となるのだが、こんなところで言うのもなんだが、夫はとても優しい人なのだ。
私の本気の訴えにひたすら紳士的に聞いてくれた。

夫はこだわりが強い、だからこそお店のことも細部にまで神経を配ってこだわり抜いて作り込める。
家事も育児も積極的どころか主導的に関わってくれる。
本当にありがたい。
けれど、いつしかそれが私のストレスになってしまっていた。

昨日は、落ち着いて穏やかに話し合って、最後はお互いに笑いあっていた。
夫婦はもともと他人なのだから、生い立ちも違えば考え方や物事のとらえ方も違う。
違うことがいいところだったのが、いつの間にか違うことが苦痛になってしまう。
そして、だんだん相手がモンスターのように見えてくる。
そうなってしまうともう悲劇です。
違うことはいいことなんだから、お互いにこんなにも違うよねって笑って話そう。
お互いの変てこさを笑おう。
「あんたってめっちゃ変やわあ(笑)」
「お前こそめっちゃ変やぞ~(笑)」
こっちのほうがなんか楽しい。
どうせこの世はへんてこりんの集まりなんやから。

こんなオモロイ夫婦がやっとります。
カフェコケットを今後ともどうぞよろしく。