オーガニック農園にて インタビュー【Coquette Talk On】第二話

防潮林のおかげであまりよく見えないが、林の向こうは海だ。
別府湾が広がっている。
温暖な気候、ほどよい潮風も気持ちいい。
「観光農園っていうかそういう商売されてもいいんじゃないですか?」
この土地のあまりの心地よさに思わずそんなことを聞いてしまった。
「そうやね、そういうのもええなあと思うけど、人が入ると畑が荒れるから、もしそういうことをやるならそれ専用にしないとね。」

この肥沃な畑は昨日今日で出来たようなものではない。
先代の持ち主からずっと、化学肥料は使わず無農薬農法を受け継いできた希少な土地だ。
ここで観光農園だなんて、私はなんて浅はかなことを言ったのだろう。
けれど、この農園には言葉では表現しがたいパワーのようなものを感じる。
たしかに、さっき頂いたカラーピーマンもトマトも驚くほど甘く美味しい。

「子供がピーマンを嫌いってよく言うのは、あれ苦いからやねんけど、本当はピーマンってそんなに苦くないねん。
化学肥料を使うから苦いねん。」
化学肥料を使わないのは、路地ものではたいへん難しい。
レタスとか葉物野菜を無農薬栽培するのは、工場型の農園で生産すれば比較的容易だ。
しかし、そうなると肥料は液肥になって、今度は美味しく作るのが難しくなる。
路地もので日の光りを浴びて育てる場合、きれいに並べてたくさん栽培すると、虫との戦いとなる。

岡井さんの畑は、失礼だが草ぼうぼうだ。
あえてそうしてある。
「こうやってほっとくねん。」
雑草も生えず、畑が絶えずきれいなのは、つまり栄養が足りないから。
すると肥料をたくさん入れ、虫もたくさん来る。

有機栽培といっても、実際のところ肥料はたいして使わない。
草が生えてもほったらかし。
伸びたらカットして、また土に入れる。
自然農法に近い。
虫をあんまり嫌いすぎると薬を使わざるを得ない。

岡井さんの葉物野菜は、虫食いだらけだ。
でもそれも一興、コケットではお客様に
「無農薬の野菜なので、虫食いだらけですが…」
と説明している。
お客様のほうもまったく気にしない。
むしろ「安心の証」と言ってくださる。

「作ってるものに愛情かけてとはいうけど、僕なんかが考えてるのは、自然に即してやって行くっていうかね、環境を壊さないこと。
ただし、自然農法がじゃあ究極に良いのかっていうと、それではみんなが食べられない。
ごく一部の人しか食べられない贅沢品になってしまう。」
自然農法のように究極的にこだわると収穫量が格段に少ない。
そこまで究極でなくても、収穫量もそこそこで、美味しくて、環境を汚さない。
そのへんがちょうどいい。
なにごともバランスが大事だということか。
しかし、バランスを保つことほど難しいことはない。
料理でも「いい塩梅」という言葉があるが、足らずでもなく過ぎているでもない、ちょうどいい塩梅というのが難しい。
岡井さんは、畑に手間をかけるというよりも、気を掛けているように感じた。

いつも気にかけている、心を向けている、それこそが愛情なのだ。
子育ても似たようなもので、遊びや旅行に連れて行くことや服や道具を買い与えるよりも、いつも気にかけてやることが大事だ。
そうすれば、子供のちょっとした心の変化にも気づいてやれるし、大事な時に手を差し伸べられる。
なによりも子供自身が、心を向けられていることへの安心感の上に伸び伸び育つ。

畑に初めて足を踏み入れた時に感じたパワーのようなものの正体が分かったかも知れない。
それは岡井さんの“気”だ。
“こころ”と言いかえてもいいだろう。

「何事も心がけ一つで何とでもなる」とか「心を込めて」なんて言葉をよく聞くし、口にもする。
しかし、その“心”とやらが一体どんなものか、正直よく分からないで使っていることも多い。
心って、パワーなんだな。
心というパワーは、付け焼刃で得られるようなものではないし、長い人生の中で自然と身に育つものだ。
岡井さんのパワー(心)あふれるあの農園にもう一度行きたくなった。

(完)
高橋香 文


お話しをおうかがいしたのは、
オーガニック農園メープルファーム
岡井宏士さん八栄子さんご夫妻


ごはんとおやつと暮らしの道具店コケット
大分県中津市京町1484-6
TEL 0979-22-8234
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住所検索されますとまったく違う場所に案内されることがあります。
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オーガニック農園にて インタビュー【Coquette Talk On】第一話

「ちょっと食べてみ。」
そういって枝からちょんと切って差し出されたカラーピーマンを一口食べてみた。

あま~い!
なんだこれはってくらい甘い。
野菜をこんなに甘く感じたのは正直言って初めてだ。

なんでこの人の作る野菜は、どれもこれも美味しいのだろう。
ずっと前から抱いていた問いの答えを求めて、この日、コケットのある中津市から車で約1時間、大分県速見郡日出町にある「メープルファーム」さんに訪れた。

別府湾を望む高台にその農園はある。
この日は朝から急に冷え込んで、秋というより冬の気配を感じる肌寒い日だった。
農園は海風の気持ちいい高台にあると聞いていたので、厚めのシャツにパーカーを着込んで出かけたが、日出町に付いてみるとびっくり。
空は雲一つない晴天で、汗ばむ陽気。

約27年前、オーガニック農業のために大阪から日出町へ移住された岡井さんご一家。
当時は、オーガニック野菜はけして一般的ではなく、まだまだ特別な存在。
無農薬に取り組む農家さんは全国的にも少なく、それはつまりオーガニック農法に適した農地自体が少ないということだった。
そんな希少な農地を探し求めていたとき、ふとしたきっかけで日出町のこの高台の空き地に岡井さんはたどり着いた。
積極的に売りに出ていた土地というわけでもなく、あまり期待せずに訪れてみると、土地には草が茂り、ミカンの木は成るがままにたくさんの実をつけていた。
そのとき、地主の方が岡井さんのお子さんに「これあげよう。無農薬やで。」とミカンを一つもいでくれた。
岡井さんのお子さんは「へぇ~無農薬やって!」と目を輝かせ「めっちゃ美味しい!」と感激し、美味しそうにほおばった。

「それからやねん、あんたらやったら売ってもいいと言うてくれはってね。」
じつは地主の方は、これまでずっと有機無農薬で様々な作物を栽培してきた方だったので、この土地を引き継いでくれる人もオーガニック農家であってほしいという思いを強く持っていたのだった。
まさに運命の出会いだったのかもしれない。

ところで、私たちがこの農園に入って、まずはじめにとても驚いたことがある。
それは、地面がふかふかに柔らかいこと。

まるで真新しい綿布団の上を歩いているかのよう土中に靴がめり込んだ。
「これはねえ、草を生やしては切り、切った草がそのまま土に還るを繰り返してるからなんや。つまりそれだけ有機物が多いんや。」
この農園は過度な除草はしない。
自然に生えた雑草はそのまま放置して、ある程度で切ってそれがまただんだん土に還って行く。
その循環が肥沃な農地を作っている。
畑全体が堆肥化した土に覆われているかのように畑の中のどこを歩いてもふわふわの柔らかい土。
前の所有者の時代から有機農法を続け、重機を一切入れたことのない証でもあり、化学肥料などを一切取り入れずとも十分に肥沃な畑が出来上がっている。

紫水菜、ハンダマ、トマト、パプリカなどの野菜があちこちに一畝二畝ずつくらい様々な種類の野菜たちが並んでいる。

何も植えず休ませている畝には野花が咲いている。
結局はこの野花たちもいずれは畑の肥となる。

落ちて食べきれなかった栗もいずれ畑の肥料になっていく。
科学の力も機械の力も借りずにこの農園だけで循環している。

「これカボスね。この木だけでコンテナ3杯くらい採れるねん。」
ともかく農園にはカボスだけでなくゆずや甘夏など果樹もたくさん栽培されている。

「柑橘はね、原則的に無農薬いうのがないねん。無農薬で作るのはすごく難しいんや。
作物いうのは、同じ種類のものをたくさん集めるとそれなりの虫が絶対につく。
せやからうちみたいにあちこち色んなものが植わってると虫が付きにくいねん。」
なるほど~!そういうことか。
「カボス農園いうて何百本もカボスの木を植えてたらものすごい虫が付く。それぞれの作物に害虫がいるんや。
たとえば畑全部にジャガイモを植えてジャガイモ農園にしてしもたら、テントウ虫だましという虫がつくねん。
その虫は茄子も好むから、たとえば近くに茄子を植えてたら茄子も同じようにやられるわ。」
作物それぞれに好む虫がいて、たくさん植えたらそれだけ虫を呼ぶことになる。
だから無農薬で作物を育てるには、大量作付けをせず、さらに先の例のようにジャガイモと茄子などの同じ虫がつきやすい作物は離れた畑で栽培するなどの、テクニックを要する。
そういえば、以前訪問した福岡県のオーガニック農家さんも小さな畑をあちこちにたくさん持っていて、それぞれに違う作物を栽培していた。
よくテレビなんかで見る、見渡す限りのレタス畑みたいな大規模農園っていうのは、オーガニックでは無理なんですね~。
「あはは、そんなんしたら見渡す限りに農薬まかなあかんわ。」
一見ごちゃごちゃした空き地のようにも見える畑だが、ごちゃごちゃにはちゃんとした意味があったんだ。
(次回へつづく)

高橋 香 文


お話しをおうかがいしたのは、
オーガニック農園メープルファーム
岡井宏士さん八栄子さんご夫妻


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インタビュー取材を受けました。

雑誌「暮らしの手帖」の元編集長でエッセイストの松浦弥太郎さん、ジャーナリストで作家の佐々木俊尚さんらが創設した「SUSONO」というコミュニティがあります。

私は、そのSUSONOコミュニティのメンバーなのですが、先日、SUSONOからインタビュー取材を受けました。

SUSONOには毎月テーマがあり、そのテーマに沿ってイベントが行われたり、Webコンテンツが展開されたりしています。

今回は、「決める」というテーマに基づいたインタビューでした。

神戸から大分県中津市へ移住し、カフェを経営する中での様々な決断についてお話しさせていただきました。

これまで、コケットのWebコンテンツ「Coquette Talk On」にて、誰かにインタビューすることは何度か行ってきたのですが、私自身がインタビューを受けることは初めてです。

とても緊張しましたが、とても新鮮な体験でもありました。

これまで無我夢中で走ってきて、正直言って後ろを振り返る余裕も無かったので、あらためてこれまでのことを思い返してみることが出来ました。

人生とは、様々な決断の連続です。

なにも経営者でなくとも、人は毎日多くの選択と決断を繰り返しています。

朝起きて朝食のパンに塗るジャムの種類や今日着る服を決めるのも“選択と決断”です。

過去の出来事を振り返って「あー、あの時あっちを選んでいれば、今もっと違う人生になってただろうなあ…」と思うこともありますよね。

私たちがカフェを開業することを決めたのは、どちらかといえばせざるを得ない状況で開業という選択に至ったのですが、ある意味それが良かったように思います。

それまで「いつかカフェをやりたいな」という思いはありましたが、いやもっと正確に言うと「いつかカフェをやるんだろうな」というぼんやりとしたイメージはありました。

積極的に「やるんだ。やりたい。」というイメージではなかったわけです。

今思えばそれで良かったと思います。

やりたいからやるのではなく、やらなきゃならないからやる。
自発的な「やる」はモチベーション次第で「やめる」の選択もできます。
でも、やるべくしてやっている場合、「やめる」の選択肢がありません。
あとは、どうやるかを考えるしかないのです。
つまり私たちはそういう思考の癖をもっているのでしょう。
これは、私たち夫婦の唯一(?)の共通点かもしれません(笑)

SUSONOでは、これからについても話題になりました。
これからも思考の癖は変わらないでしょう。
しかもダブルパワー(ふたりとも)ですから(笑)

今回の取材では、インタビューという作業スキルの勉強にもなりました。

これから、コケットのWebコンテンツ「Coquette Talk On」に活かしていきたいと思います。


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「磁今 JICON」今村製陶さん 第二話【Coquette Talk On】

陶磁器の原料は石だ。
山から陶石を採掘し、それを粉にして水に混ぜる。
すると沈殿した部分と、粉が溶け込んだ上澄み液とに分かれる。
その上澄み液をろ過して、残った粉を粘土にする。

もともとの有田焼の原料は、有田市にある泉山という山で採掘される白い石だ。
1616年、この泉山を 朝鮮人陶工・李参平が発見し、日本で初めて陶磁器が誕生したといわれいる。

(記事中の表記、今村肇氏=今村、コケットのマスター高橋通泰=髙橋、筆者コケット高橋香=香、敬称略)

今村:でも僕の仮説はちょっと違ってて。
白い石は先に見つかってたんじゃないかと思うんです。
それで秀吉が朝鮮から技術者を連れてきたと思っています。

泉山は国指定史跡・泉山磁石場として保存されている。
この有田で、日本で初めて陶磁器が誕生して以来400年以上経つ。
”山”とはいうが、400年間掘り続けられた山は、もはや山の姿を留めていない。
現在、陶石の採掘は、ほとんど行われていない。
今の有田焼の原料となる陶石は、熊本県の天草陶石を使用している。
熊本の天草陶石は、有田泉山のものより白いという特徴がある。

今村:磁今ももちろん天草の陶石を使っています。
天草の山から採掘された石は、おもに4つの等級にわけられています。
作家さんは「特上(とくじょう)」、多くの有田焼の窯元は「撰上(えりじょう)」、大量生産品は「撰中(えりちゅう)」「撰下(えりげ)」を使います。
しかし、磁今は全くオリジナルの石を使っています。
昔から有田は高温の1300度で焼くことで「丈夫な割れない有田焼」を武器に器を作ってきました。
それが有田の職人のこだわりと自信です。
しかし僕は、石から変えて温度や釉薬もオリジナルのやり方をすることで「磁今」を生み出しました。

天草の山から採掘された石を、いわゆる良い石(耐火度の高い白い石)と良くない石(耐火度の低い茶色の石)の何種類かの等級にわけ分類された磁土をつくる。
良い石は昔から簡単に取れる所から採っていたため、現在の採掘場は良い石をとるために良くない石が大量にとれる。
しかし、たくさんと採れる良くない石によって採掘コストが上がる一方、良い石の価格はほぼ変わらないままで、事業の継続が危うくなっているのが現状だ。

良くない石と表現しているが、使い方によっては、これがとても良い石になるのだ。
今村氏は、ここに着目し、この「良くない石と呼ばれている良い石」が有田・波佐見地区でも多く使われるようになれば、無駄に陶石の山を掘る必要もなくなり、陶石を採掘する人たちも助かるのでは?と考えた。

そこで、低火度(1200度前後)で磁器化する磁土=「良くない石」を使い、それにあった釉薬を独自で開発し、あの磁今が生まれた。
素材感のある優しい風合いを持った「生成りの白」の誕生だ。

今村:有田焼はもともと1300℃で焼くんですが、僕はこれを1240℃で磁器化する磁土をあえて使うことで、独特の風合いを作っています。

:1240℃で焼くっていうのは、難しい技術なんですか?

今村:いや、焼くことそのものはそんなに難しいことではないです。
ただ、この有田では1300℃で焼くっていうことを当たり前としてきたので、それを変えるということがもしかしたら難しいことかもしれないですね。
1240℃で焼くためには絵具も釉薬もすべて変えなくちゃいけない。
僕はたまたま、磁今というブランドをゼロから立ち上げたので、それが可能だったんです。
有田焼の陶石の採掘現場では、わずかな良い石を掘るために多くの他の石を捨てている、というか放置している。
採掘コストがかさんで、このままでは廃業もあり得るという現状を前にして、やっぱり、この石を使うことには意味があるなと思ったんです。

:そのことでより持続可能なものになりますよね。
放置されているものに新たな使命が生まれるというか。

今村:でもだからといって、原料代が安いってわけじゃないんですよ。

高橋:えっ?!そうなんですか?

今村:誰も使わないもの、流通していないものなので、むしろコストがかかるんです。
原料代は「撰上」と同じなんです。

磁今の磁器は、いくつかの作り方で作られる。
デザインによって、それぞれの形状にあった作り方で作られている。

圧力鋳込み(あつりょくいこみ)
上下雄雌がある型に粘土を流し込み成形するやり方。
型に空いた小さな穴から粘土が入っていく。
いくつも重ねられた石膏型の中に、空気圧で粘土を注入する。
空気圧で押し出すから圧力鋳込み。
圧をかけるので土がすごく締まる。

今村:磁器は、このように石膏型を使った作り方が合っているんですね。
陶器はロクロで成形するのだが、陶器の土をこの石膏型のやり方で作ると粒子が荒く、鉄の分量が乱れる。
陶器の荒い土を石膏型に入れて作ることはできない。
陶器はむしろ手作りで作った方が素材感が引き立つ。
しかし、磁器はもともと素材感がないのが素材なので。

排泥鋳込み(はいでいいこみ)
石膏型にドロドロの水のような粘土を流し込む。

時間が経つと石膏が水分を吸って、約3ミリくらいの厚み部分が固まる。
中のドロドロ粘土を排出し、よく乾燥させると形になる。
この時点では、形になっているとはいえ大変やわらかい。

これを800℃で焼く。
すると写真のピンク色のようになる。

これに釉薬をかけて1200℃で焼くと写真の白いものになる。
はじめの石膏型に比べ、出来上がり品は15%ほど小さくなる。

:なるほどこんなふうにシステマティックに作られているとは思いませんでした。
しかも、何度も焼くんですね。

今村:作り方からみると磁器は本来大量生産に向いているんですね。
個性がないといえば個性がないんだけど、でも僕はそれはたんに磁器の特性だと思っていて、それを無理して手作りで作る必要はないと思うんです。
手作りは手作りの良さがある。
でも、お客さんに安くて良いものを買ってもらいたい。
そこをあえて手作りにして高いものにして買っていただくよりは、安く大量につくれるという磁器の特性を活かして、より広く楽しんでいただくほうがいいと思っています。
けして手作りの作家物も悪くはないんだけど、磁今としてはこの磁器の素材の特性を活かして作りたいんです。

今村:これは機械轆轤(ろくろ)っていう作り方です。
波佐見焼きは、轆轤(ろくろ)でもオートメーション化してもっと大量生産型にしているところもありますが、いわゆる窯業(ようぎょう)、器を作っているところは轆轤(ろくろ)で手作りしているところが多いですね。

左と右で微妙に形が変わっているのが分かるだろうか。
左が轆轤(ろくろ)を回してできたもの。
右が削りを施したもの。
アウトラインをよく見比べて頂きたい。
わずかに削って、シルエットに微妙な反りを加えているのだ。

今村:一歩間違えればふにゃふにゃしたものになってしまうんです。
キリッとさせたまま柔らかさを出す。
たぶん、うちにしか出来ないことだと思います。

磁今を磁今たらしてめているのは、この削りと釉薬だ。
型から出したものに丁寧な削り作業を施すことで、手作りのぬくもりと微妙な個体差が生まれる。
半ばオートメーションで作られているようで、しかし、しっかりと人の手を入れ、命を吹き込むのだ。

この方法は、たしかに効率的ではないかもしれない。
効率的に生産できる磁器ゆえにもっと企業的な窯元になることは可能なのだが、今村氏はそれを選ばないだろう。

磁今は、とてもデザイン性が高い。
それゆえ時に作家っぽく扱われることも多いらしい。
しかし、そんなとき、この半オートメーションの作り方から「作家じゃないじゃん、なに作家ヅラしてんの」的な評価を受けることもあるという。
これは今村氏にしてみれば、とんだとばっちりだ。
彼は純粋に、実直なものづくり人なのだ。
素材をよく知り、素材を活かしたものづくりをすることは、作り手として絶対不可欠な要素だ。
今村氏はいう。
「僕は社長業は得意じゃないんで、できればずっと作っていたいです。」

ものは人が作る。
まさに作り手の魂の結晶なのだ。

インタビュー第一話【Coquette Talk On】「磁今 JICON」今村製陶さん


ごはんとおやつと暮らしの道具店コケット

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Tel. 0979-22-8234
(金曜定休+不定休)
営業時間 11:00~17:00
#カフェのこと・暮らしの道具のこと

※ 中津城から徒歩1分
周辺に市営駐車場(無料)が多数あります。
カーナビで表示されない場合は、中津城を目安にお越しください。
迷った場合は、遠慮なくお電話を。

【インタビュー】珈琲木馬 小野悦典さんに聞きました。第一話

珈琲木馬,小野悦典,コケット

高橋:小野さん、お久しぶりです。
僕は、毎日小野さんの珈琲をいれているから、毎日小野さんに会っているみたいなものなんだけど(笑)

小野さん:あはは、そっか。
今日はよろしく~!

珈琲木馬 コケット

高橋:今日はもう特にテーマはなく、小野さんのお仕事ぶりを中心に珈琲談議をしたいなと思っています。
テーマはないって言っておきながら、珈琲談議ってテーマを振っちゃってますけど(笑)
でも小野さんと話すのに珈琲抜きってのは野暮ですもんね。

小野さん:いやあ気づけば40年、珈琲に向き合って来てしまったよね~。
最初に居たところが湯布院の亀の井別荘でしょ?
それがね、いま思えば僕の人生には大きな出来事だった。
なにせ当時の亀の井別荘はすごかったから。

高橋:本当にそうですね、今と昔では湯布院のイメージもずいぶん変わってしまったんですけど。
僕は小野さんよりずっと後に亀の井別荘ににお世話になった世代なんですが、お客様がすごく良かったと思います。
お客様に育てて頂く、その感覚を初めて学んだのが亀の井別荘でしたね。

珈琲木馬 コケット

小野さん:旅館に泊まっているお客様も文化人が多かったでしょ?
だから目も舌もこえているお客様がとにかく多くてね。

高橋:そうですね、僕もよく当時の人気歌手や女優さん方をたくさん接客したのを思い出します。
その上めちゃくちゃ忙しかった。
お昼の湯の岳庵なんて待ち時間が2時間とか当たり前でしたもんね。

小野さん:亀の井別荘の天井桟敷っていう喫茶店が、当時日本でも5本の指に入るといわれている素晴らしいロケーションの喫茶室だったから。
その天井桟敷で提供する珈琲として恥ずかしくない珈琲を焼こうと。
だから、それだけでこの40年を使ってきたんですよ。
もっと商売が上手だったらもっと売れてたと思うんだけどね(笑)

高橋:亀の井別荘の珈琲は衝撃的でした。
深煎りローストのものすごくコクの深い珈琲で、とても印象的な珈琲でした。
それは、いまも続いてますよね。

小野さん:それはね、むかし林玄さんっていう方がコクテル堂っていうのを作ったんですよ。
一時期ね、もうそれはそれは、すごくよく売れまくってたところなんですよ。
昔の日本には深煎りの珈琲がなかったから。
ダークローストっていうのがなくて。

高橋:もともとは亀の井別荘の珈琲はコクテル堂さんのだったんですか?
エイジング珈琲といって熟成生豆を使ってしっかりっとした味わいの珈琲として有名ですよね。

小野さん:そうです。
で、あるとき僕が、亀の井別荘の当時社長だった中谷健太郎さんのところへ行って「珈琲の仕事させてください」っていったら、健太郎さんはもう何も言わんでコクテル堂さんをやめたんですよ。
もうそれはね~、当時コクテル堂っちゅうのは、マニアの間でも一番有名な珈琲屋やったんですよ。
それを止めて俺にやらせるちゅうことは、「お前それを命がけでやれ」っていうことやと。
それはもう、俺の中で何トンかのおもりが背中に乗った瞬間やったね。(笑)

高橋:そういういきさつがあったんですね。

小野さん:当初は、いっさい店も開けんで、納品する豆よりも捨てる豆のほうが圧倒的に多かった。

高橋:ええ~っ、それじゃあ儲けがないじゃないですかあ。

小野さん:でもそれだけ俺の責任っていうのは重かったんですよ。
健太郎さんがそれを俺に変えたんだったら、俺はもう命がけでしなきゃっていう。
それでもうここまでのめりこんじゃった。(笑)
だからいま、巷で起こっていることは僕にしてみれば異様なことですよ。

珈琲木馬 コケット

高橋:そうですね、今、ちょっと珈琲ってファッションになってるところありますよね。
雑貨店やアパレルショップで珈琲豆が売られているのも、近頃当たり前の光景で、こういう場面での珈琲って必ず、コンセプト重視でパッケージがいい。

小野さん:そう、だから俺にしてみれば、100gで千円も二千円もする珈琲なんて考えられないんだよね。
珈琲ってそういうもんじゃないんじゃないかなって、もっと暮らしに密着したものだと思うんだけど。
花の香りがするとかバニラの香りがするとか、フレーバー珈琲なんていうのもあったりしてさ。

高橋:小野さんの珈琲は、たしかに特徴的なんですけど、だからといって過ぎてないっていうかバランスがいい。
例えば映画祭ブレンドなんてめちゃめちゃ濃くて深くて特徴的なんですけど、毎日だって飲めますもんね。不思議に。

小野さん:そう、バランス。
珈琲ってバランスがすごく大事なんよね~。

高橋:小野さんの珈琲には、小野さんの人柄っていうか、魂が入っていると僕は思うんです。

(次回に続く)

【インタビュー連載】第二話 珈琲木馬 小野悦典さんに聞きました。


【 profile 】

小野 悦典
湯布院・塚原高原「珈琲木馬」代表。
丁寧にローストされた自家焙煎珈琲と奥様の焼く素朴な焼き菓子は、多くの食通・珈琲通に定評がある。
珈琲木馬
大分県由布市湯布院町塚原奈良山4-35


ごはんとおやつと暮らしの道具店コケット

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